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デフからはガラガラと大きな異音が…ゴロゴロという振動もある。
デフの中で事件が?

オーナーさんはダメもとでデフに新しいオイルを入れてみたけど変化はなし。

抜いたオイルは異臭が凄くて…
 こんな感じのS2000が入庫しました。

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最初の写真に対向しているのがペラシャの接部赤➡です。青➡の部分は精度が非常に高くて、

両者は嵌合して密着しているので外にオイルは漏れ出ない設計になっているんですね。

 写真の漏れたオイルはペラシャを取り外したことで外に出たオイルなんです。
ちょっとこの説明だと何が問題なのか分りませんよね。

ブログを書いている私も伝え切れているか、自信ありません(笑)。

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で、「問題はここだ」的に説明してみます。赤丸部はペラシャ、青➡がデフの

「コンパニオンプレート」です。

 上の写真はペラシャの取り付けボルトを緩めたらオイルが漏れ出したので、
すかさず撮影したショット。普通はボルトを緩めてもオイルは出ません。

乾いてるんです。ここを緩めてオイルが出ることが異常なんです。

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赤➡がオイルシール、デフオイルはこのオイルシールで止めているので、

つい「シールの不良」と考えてしまいますが、今回は青丸部の窪みに溜まるオイルが問題、

「漏れ」じゃなくて「オイル溜まり」なんです。

単純なオイルシールの不良じゃないんですね。

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では、何が原因でオイルが出て溜まったのか?

それは何と、青➡のスプラインの溝を伝わって外に流れ出たんですね。

通常このスプラインとコンパニオンプレート赤丸は、プレス圧入されて組み立てます。

つまり隙間はゼロ。さすがのリジカラも入る隙がないくらいです。

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では、デフオイルはどんな流路で外に出たのか?

それは赤➡のテーパーローラーベアリングが嵌合しているシャフトの磨耗からです。

シャフトとベアリングレースは圧入されていますが、そこにガタがありました、主な音源ですね。

 オイルはシャフトのスプライン青➡にできたガタの隙間を伝って写真の

右側から左側へと流れ出ていたんです。

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シャフトを拡大するとコレだもの!ハブベアリングが嵌合しているスピンドル部の

痩せ➡水の浸入➡錆の発生➡磨耗の進行というフローはお約束ですね。

 ふだんはしない音(つまり振動)、臭い、などには必ず原因があるものです。
私も試乗などでだいたいの予想はつきますが、分解することで正確な診断、見積もりができます。

電話でご相談いただくときは、異音がいつも聞こえるか、加速時、減速時、旋回時、登り下り、

などで差はあるか、朝冷えた状態から温まり過程で音の変化はあるのか、などといった

音量、音質の変化を聞きたいんです。

 でもやっぱり試乗させていただいた方が速くて正確かな。
オーナーさんに聞いても「そんな細かいことは分らな~い」って感じですから(泣)。

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原因を特定したくてデフケースを密閉して、この「漏れ野郎」なシャフトを組んで

加圧、オイル漏れのテストをしました。

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スプラインに塗布した石鹸水からはみごとな蟹泡がブクブクと!

原因が判明してすっきりしました~(笑)。

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写真はこのお釜の内側です。青丸部はアルミ鋳物の壁に刻まれた異常な

熱疲労跡の模様。これはケース内の温度が摂氏180度を超えるような

限界域で起こる超限界現象で、世界中のFRが採用しているグリーソン型の

デフではおおむね同じような現象が起きます。

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クラッチを交換する時にはフライホイルを外して裏側のブロック面を仔細に点検しましょう。

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目視でオイル跡はなくても、念のため現像液をスプレーしてオイル跡を露出させ

チェックします。クラッチ交換して数千キロで再修理だと、いろいろお互い傷つきます。

予測できることは予防する。再修理はメカとしては恥ずかしいんです。

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降ろした旧ミッション。ちょっとうら淋し~い感じですが、でも大丈夫。立派に再生しちゃいます。

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ほら、おNEWなリビルトSPOONミッションASSY。外見は中味を表し、心は顔に表れる。

商品情報はこちら → TRANSMISSION OVERHAUL

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完成したらエンジンをかけてミッションもデフも動かして新人が測音検査します。

その後はベテランが「ダメ出し試乗」するのでご安心あれ。

五感をフル動員して慣らし運転しながらしっかりテスト走行しますので。

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試乗は、横浜名物マリンタワー方面へ。このタワーの幾何学模様はシュールですよね。

いわゆるキュビスム的というか、このタワーこそ日本が誇る代表的建造物じゃないのかしらん。

それにくらべ、今どき流行のスカイ君なんて何だかなあ~

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日々の作業をブログで紹介できるのはごく一部です。

私たちはユーザー様からみると何処だろうと、誰がしようと同じに見える仕事でも、

休みなく研究しながら精進しています。

このプロセスは、レースとじつに似ています。つまり、私たちの仕事とレースは

同じ感覚でつながり、影響し合っているのです。

ピットで止まるコンマ1秒を考え、1秒での給油量アップにトライして、

速くても壊れない工夫を施す。そんなふうに仕事をイメージしているのです。

レースで勝つことへの探究心が、あなたのHondaの整備やチューニングに

役立つといいなあ~なんて思いながら…
では、また。

 

Posted by 市嶋